退職時に考えることのひとつとして退職金にかかる税金の事があります。「いったいどのくらい納めなければならないのか?」「確定申告をすれば少しは戻ってくるのか?」などいろいろ気になることがあるでしょう。
今回は「退職金にかかる税金」とあわせて「退職所得の受給に関する申告書」とはどのようなものか確認してみたいと思います。
退職金にかかる税金
退職金を受け取ることは、人生のうちでそう何度もあることではありません。転職によりスキルアップをしているような方を除けば、ほとんどの方が初めてなのではないでしょうか。
そこで知っておいていただきたいのが、退職金にかかる税金です。
受け取ったときに、「期待していた金額と違う!」とならないよう、税金の種類と計算方法について確認し実際に支給される額を計算することで、その後の資金計画もより確かなものが立てられるでしょう。
退職金に課税されるのは以下の3つです。
ただし、退職金はそれまでの長年の労をねぎらう一時金であり、その後の生活を設計するための資金であるという側面から、「他の所得と分離して課税される」「退職所得控除がある」などの、税負担を軽減するための優遇措置が設けられています。
退職金を受け取る際しておくべき手続き
退職金を受け取る際に、会社に対して所定の手続きをしておくことができます。
ここでいう所定の手続きとは、「退職所得の受給に関する申告書」の提出です。
たったそれだけの手続きをすることで、退職金から優遇措置を受けた税率で計算された所得税と復興特別所得税が源泉徴収され、原則として確定申告をする必要がなくなります。
この手続きをしていないと、受け取る退職金に対して一律20.42%の所得税と復興特別所得税が源泉徴収されますので、年度末に確定申告をして清算することになります。
ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出された方も、場合によっては申告することで税金の還付がある場合があります。気になる方は最寄りの税務署で相談してみてください。
国税庁ホームページ(外部サイト) 退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)(PDF/362KB)
退職金にかかる税金の計算方法
所得税の計算方法
「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、退職金から所得税と復興特別所得税が源泉徴収されます。
簡単な計算で退職金のおおよその受取額が把握できるようになりますので、順を追って計算してみましょう。
まずは、課税対象となる金額(=課税退職所得金額)を算出します。
計算方法は次のようになります。
(※1)退職所得控除額の計算方法は下記のとおりです。
勤続年数20年超の場合 800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年)
お分かりいただけるように、退職金すべてに課税されるわけではなく、控除額を引いた額を更に半分にした金額に課税されることになりますので、納める税金はずいぶん軽減されます。
※例外もありますのでご注意ください。
役員等勤続年数が5年以下である人が支払を受ける退職金のうち、その役員等勤続年数に対応する退職金として支払を受けるものについては、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額が課税退職所得金額となります。
(出典:国税庁 所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の計算方法(平成30年分))
課税退職所得金額がわかれば所得税を算出することができます。
計算式は次のようになります。
(※2)(※3)税率及び退職所得に応じた控除額は下記の表のとおりです。
課税退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から 39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
おおよその所得税額が計算できたでしょうか。
以下、復興特別所得税と住民税についても計算してみましょう。
復興特別所得税の計算方法
(所得税と復興特別所得税の合計税率)=(所得税率)×102.1%ですので、復興所得税額は上で求めた所得税額に2.1%をかけた額になります
住民税の計算方法
住民税は、所得税を計算する際に求めた退職所得金額に住民税率10%(都道府県民税4%+市町村民税6%)をかけた額になります。
退職金にかかる税金を計算してみる
税金の計算方法がわかったところで実際に2つの例を計算してみます。
例1)勤続10年・退職金400万円
- (退職所得控除額)=40万円 × 10=400万円 ※勤続年数20年以下の場合
- (課税退職所得金額)=(400万円-400万円)× 1/2=0
課税退職所得金額が0ですので、このケースでは退職金に税金はかかりません。
例2)勤続25年・退職金1,950万円
- (退職所得控除額)=800万円+70万円×(25-20)=1,150万円 ※勤続年数20年超の場合
- (課税退職所得金額)=(1,950万円-1,150万円)× 1/2=400万円
このケースでは、課税退職所得金額400万円に対して課税されます。
- (所得税)=400万円×(税率20%)-(控除額427,500円)=372,500円
- (復興特別所得税)=372,500円×2.1%=7,822円
- (住民税)=400万円×10%=40万円
したがって、退職金にかかる税金は780,322円となります。
さいごに
今回は退職金にかかる税金について確認してみました。
退職金は他の所得に比べ税制面で優遇されているのがわかりましたが、それでも場合によっては大きな金額となってしまいそうですので、その後の資金計画がスムーズに進むよう早い段階で計算し、実際にどのくらい退職金を受け取れるのか確認しておきたいものですね。
「退職所得の受給に関する申告書」を確認することもお忘れなく。