シニア世代に「医療保険」や「がん保険」は必要?それとも不要?

テレビをつけていると、次から次へと生命保険会社のCMが流れ、いやでも耳に入ってきます。
特に最近多くなったと思うのが、「高齢者」をターゲットにした保険です。
そんな中、シニア世代の保険について考える機会がありました。

保険について考えることになった出来事

きっかけは母からのLINE

ある日、めったにない母からの連絡がありました。

保険会社から郵便が届いたんだけど、
保険料が値上がりするみたい。

詳しく聞いてみると10年満期の医療保険の満期更新の案内が来たようでした。

 

倍になっちゃうみたい。
こんなに高くなるならやめちゃおうかと
思うんだけどどう思う?

更新後の保険料が現在の約2倍になることに驚いているようでした。

何かいい方法がないか調べてみるから
ちょっと待って。

母は持病を持っているので、少しくらいは保険に入っていたほうがいいと思っていました。もし更新をしないでやめてしまったら契約できる保険がなくなってしまうのではないか。仮に契約できる保険があったとしても、さらに高い保険料が必要になるのではないか。そう思ったため、母には手続きを待ってもらい、少し調べてみることにしました。

保険の内容を確認

週末、早速実家に行き現在の契約について確認してみました。保険会社からの通知に記載されていた更新後の保険料は、年齢のことを考えるとしかたがないのでしょうが本当にほぼ2倍になっていました。
契約していたのはA社の10年満期更新タイプの医療保険。
契約は20年前でしたので、前回の更新は通知に気づかないまま自動更新されていたのでしょう。今回は2度目の更新でした。
自動更新なので、現在の健康状態に関係なく継続できるというメリットはありましたが、古い保険なので保障の満了が80歳というのが気になります。今の医療保険は終身タイプが主流と聞いていますし、もしかするともっと有利な保険があるのではないかと思い、詳しい資料を請求してみることにしました。

保険資料を請求し新しい保険に契約

前にも書いたように母には持病がありましたので、「緩和型」と呼ばれる医療保険の資料を、これまで契約していたA社に加えてM社とO社の合計3社に請求したところ、多少の差はありましたが、ほぼ同じタイミングで資料が届きました。あまり遅いとその会社のシステムを疑ってしまうところですが、その点では3社とも合格といったところでしょうか。
取り寄せた資料では主に以下の3点を比較してみました。

・健康状態の告知 ー 持病が告知項目に該当しないか
・保障の内容 
- 保障範囲や保障期間
・保険料 
ー できるだけ安いほうがいい

最初に健康状態の告知項目を確認したのですが、同じ緩和型といってもその引き受け条件には若干違いがありました。告知項目を見たところ、A社の保険は申し込むことができないことが分かりましたのでこの時点で比較対象から除外です。残ったM社とO社の保険に加えて契約中の保険を比較したのですが、保険料の増加を極力抑えることができ、母の希望に近い特約を付けることができるO社の保険に申し込むことにしました。
契約が成立し保障がスタートするのを待って、現在契約している保険会社には更新しない旨連絡し手続きは一段落です。

問題解決のはずだったが

今回の手続きで、それまでの保険に比べ1回の入院に対する支払限度日数が短くなることになってしまったのですが、それでも母は満足していました。保険契約は自分で納得のいく形でするのが最善だと思います。人それぞれ選ぶポイントが違う中、母が選んだのは「現在の保険の自動更新に比べ保険料がずっと抑えられるという所だったようです。
これで一件落着と行きたかったのですが、なんとなくもやもや感が残りました。

「本当にこの選択は正解だったのだろうか?」

すべてに満足できる保険というのは少ないかもしれません。ですが、ほかの方法や選択肢もあるのではないか?私もシニア世代に突入したわけですし、情報はできるだけ多いほうがいい。
ということで、シニア世代の保険について更に調べてみることにしました。

医療保険について考える

医療保険を考えるとき、まず押さえておきたいのが公的医療保険制度についてです。
はじめに、シニア世代のみなさんが加入しているであろう公的医療保険について簡単にふれてみたいと思います。

公的医療保険とは?

わたしたちが病気やけがをしたとき、一定の割合を自己負担することで必要な医療を受けることができる制度です。

公的医療保険こうてき‐いりょうほけん
社会保険の一つで、病気やけがをしたときに、一定の自己負担で必要な医療を受けることができる制度。
[補説]日本では、被保険者の職業や年齢によって、健康保険・船員保険・共済組合・国民健康保険・後期高齢者医療制度などに分かれ、すべての国民に加入が義務づけられている。→国民皆保険
出典:小学館デジタル大辞泉

代表的な2つの項目について見てみましょう。

自己負担割合

保険診療に関しては、医療費に対して一定の割合を負担するだけで医療を受けることができます。
医療費の自己負担割合を表にしてみます。

年齢 自己負担
義務教育就学前   2割
義務教育就学後
~70歳未満
  3割
70歳以上
75歳未満
現役並み所得者以外 昭和19年4月1日以前生まれ 1割
現役並み所得者以外 昭和19年4月2日以降生まれ 2割
現役並み所得者   3割

上記のように、年齢と所得により違いはありますが、保険診療に関しては、かかった医療費に対して3割以下の自己負担で医療が受けられることが分かります。

高額療養費制度

1か月あたりの医療費の支払額に上限を設けているのが高額療養費制度です。要約した表は次のとおりです。

70歳未満の場合

所得区分 自己負担限度額
年収約1,160万円~
標準報酬月額83万円以上
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
年収約770万円~年収約1,160万円
標準報酬月額53万円~79万円
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
年収約370万円~年収約770万円
標準報酬月額28万円~50万円
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
年収約156万円~年収約370万円
標準報酬月額26万円以下
 57,600円
住民税非課税者等 35,400円

70歳以上75歳未満の場合

所得区分 自己負担限度額
現役並み所得者 年収約1,160万円~
標準報酬月額83万円以上
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
年収約770万円~年収約1,160万円
標準報酬月額53万円~79万円
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
年収約370万円~年収約770万円
標準報酬月額28万円~50万円
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
一般所得者 年収約156万円~年収約370万円
標準報酬月額26万円以下
 57,600円
  住民税非課税世帯  24,600円
住民税非課税世帯
年金収入80万円以下
 15,000円

上記以外にも、外来の上限や世帯合算の制度などもありますが、ここでは要点だけ書かせていただきました。
参照:厚生労働省ホームページ 高額療養費を利用される皆様へ

表を見ると、所得などにより上限は変わりますが、1か月に支払わなければならない医療費の自己負担額には上限があることがわかります。
つまり、保険診療を受ける場合1回の診療については1~3割の自己負担で受診ができ、どれだけ治療を受けても1か月あたりの支払いには上限額がありそれ以上の負担は必要ないことになります。

医療保険は必要か?

ここまで見てきましたように、一定の年齢を超えると口での負担割合は通常安くなります。
また、医療費の自己負担額には上が設けられています。
そこで疑問に思われるかと思います。

「ある程度の貯えがあれば、医療保険に入る必要はないのでは?」と。

たしかに、そういった方もいらっしゃると思いますし、ネットで検索していると、医療保険は必要ないと断言するような記事を目にすることもあります。だからといって、すべての方にそう言えるかというと、そうは言い切れないようです。なぜなら、公的医療保険では保障されない部分があるからです。自己負担に上限が設定されるのは保険診療といわれる部分に限られるのです。

保険診療ほけん‐しんりょう
国民健康保険や社会保険等の健康保険などの公的医療保険制度が適用される診療を受けること。→自由診療     
出典:小学館デジタル大辞泉

ご存知の方も多いかもしれませんが、差額ベット代については自己負担になります。個室でなくても、1日数千円の差額ベット代が発生するケースはありますし、設備の整った個室では数万円になることもあります。
また、高額になると言われている先進医療に対して公的医療保険は適応になりませんし、食事療養費や雑費など保険適応外の出費が発生するのは事実です。
そのような部分に備えるのが医療保険だと思います。
医療保険は契約時の健康状態により、大きく2つのタイプに分かれます。
ひとつは、一般的に医療保険といわれるタイプのもので、申し込み時の健康状態などを少し細かく告知して契約する保険です。
もうひとつは、引受基準緩和型と呼ばれる医療保険で、健康状態などの質問にはい・いいえで答えるだけで申し込むことができます。そのため、既往症のある方など、通常の医療保険の申し込みを断られた方も契約できる可能性が高いというメリットありますが、その分保険料が割高になったり、一定期間保障が減額されたりなどいくつかのデメリットもあります。

それぞれ必要に応じて保障額を増減させたり特約を付けたりすることができますので、健康保険適応外の部分に備えるため、場合によっては民間の保険を上手に活用することも必要かと思います。

がん保険について考える

がん保険という名前はよく聞きますが、いったいどんな保険なんでしょう。そもそも医療保険に入っていれば必要ないのではないでしょうか。そう思っていたのですが。

日本人の2人に1人はがんを経験する

こんな言葉を耳にされたことがあるかと思います。では、どれくらいのリスクがあるのでしょう?
下の表をご覧ください。
右端の生涯の欄をみると、男性で約6割以上、女性で約4割以上の人が、がんにかかるリスクがあるということがわかります。(ちなみに、男性50歳の20年後までにがんと診断される確率が19%ということです。)

現在年齢別がん罹患リスク
男性
現在の年齢 10年後 20年後 30年後 40年後 50年後 生涯
30歳 0.6% 2% 7% 20% 41% 62%
40歳 1% 7% 20% 41%   63%
50歳 5% 19% 40%     63%
60歳 15% 38%       63%
70歳 29%         60%
女性
現在の年齢 10年後 20年後 30年後 40年後 50年後 生涯
30歳 1% 5% 10% 18% 29% 47%
40歳 3% 9% 17% 28%   46%
50歳 6% 14% 25%     44%
60歳 9% 21%       41%
70歳 14%         36%
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター

この表だけ見ると、男性の場合は言われている2人に1人という言葉より多いんですね。では、もしがんになってしまったらどんな治療があるのでしょう。

がんの治療とがん保険

がんの治療では、多くの場合・手術(外科治療)・薬物療法(抗がん剤治療)・放射線治療が選択されるようです。
この3つは、がん治療の3大治療と呼ばれています。最近では医療技術が進歩し、免疫療法や造血幹細胞移植をはじめとする、新しい治療法も次々にはじまっているようです。ここのところ耳にすることが多くなったオプチーボも、免疫療法に使われる免疫チェックポイント阻害剤です。一般に、がん治療の場合、「治療期間が長くなる」「外来での治療が多くなる」といったケースが見られるようです。そのような傾向に対応できるよう、がん治療に特化した保険ががん保険です。

がん保険の特徴

がん保険も医療保険の一種と言えると思いますが、保障の対象をがんに限定することでほかの保険では保障されない内容なども準備できる、がん治療に特化した保険です。
がん保険には、診断確定時に一時金のみを受け取るタイプと、診断・入院・通院など治療過程で細かく受け取れる給付金を設定しているタイプのものがあります。
また、がん保険単品で契約するものと、ほかの保険に特約として付加するタイプがあります。
入院給付金が受け取れるタイプでは、支払限度日数を無制限に設定しているものが主流ですが、これは再発や転移、入退院を繰り返すリスクがある病気だからこその設定です。通院治療に対しての給付では、所定の治療に対しては入院の有無を問わないものや、日数無制限で受け取れるものなど各保険会社ごとに特徴があります。放射線治療や抗がん剤治療などに対する保障も、主保障に組み込まれていたり特約として付加することが出来たりします。

がん保険は必要か?

現状、各種保険の中で優先度が高い保険だと思います。
前にも書きましたが、再発や転移、長期療養といったリスクがある病気ですので、いくら公的健康保険に高額療養費制度があるといっても、月々の負担は家計を圧迫していくと思われます。さらに「現在年齢別がん罹患リスク」を見るとわかるように加齢とともにリスクが増す病気ですので、シニア世代の方こそ検討する必要がある保険なのではと思ってしまいます。
また、既にがん保険に契約していれば考える必要はないかというと、そうは言い切れません。
例えば、20年以上前に契約してそのまま見直しを一度もしていないがん保険では、現在の医療事情に合わないかもしれないようです。理由はいくつかありますが、一番の理由は「入院して手術をする」治療方法が一般的だった時代に作られた保険だからです。
下の表は、厚生労働省平成26年患者調査の抜粋です。入院患者数は減少傾向なのに対し、外来の患者数が増加していることが分かります。

Ⅱ 新生物   平成11年 14年 17年 20年 23年 26年
悪性新生物 総数 256.7 259.1 285 297.8 298.3 300.8
入院 136.8 139.4 144.9 141.4 134.8 129.4
外来 119.9 119.7 140.1 156.4 163.5 171.4
厚生労働省平成26年患者調査 推計患者数の年次推移,入院-外来×傷病分類別抜粋  単位:千人

通院保障がついていないがん保険や、入院治療を前提とし退院後の通院のみ保障するもの、支払日数を一定の期間で区切っているものなどは見直す必要があるのではと思います。
また、3大治療に対する保障が無いものも見直すべき保険だろうと思います。

さいごに

母親の一言がきっかけで少し調べてみましたが、医療保険は、「どの保険を選ぶか」の前に「自分にとって必要かどうか」から考える必要があるのかもしれないと感じました。ただ、最近は必要最小限の保険ということで、入院給付金日額3,000円から契約できる医療保険も増えていますので、もしも病気になってしまった時の費用を考えるとき、貯金を切り崩すのが不安に思われる場合は、その一部分を医療保険で備えるという選択肢もあると思いました。
一方、がん保険はがん治療に特化した保険ということで、抗がん剤治療や放射線治療などに対して細かく保障設定できることに魅力を感じました。医療保険だけでは少し心配な方や、「医療保険は不要だけれど、がんだけは心配だ」といった方は一度資料を見てみるのもいいかもしれません。
また、現在がん保険に契約してるから大丈夫と思っている方も、もし最近何年も内容を確認していない場合は一度保険証券を開いてみて、もしがんになってしまった場合に、現在の治療内容に対して使える保険かどうか確認してみることをお勧めします。