ネット上で多く見かける「こどもの医療保険不要論」を考えてみた

「こどもの医療保険」とネットで検索すると「不要」という文字を多く見かけます。
「不要?」と疑問符をつけていたり「必要」「不要」を併記し情報提供しているサイトが多い中で「不要である。」と断言してしまっているものには少し違和感を覚えます。

こどもの医療保険不要論の論拠について考える

こどもの医療保険は不要だと唱える人の多くはおおむね2つの理由を挙げ説明しています。
ここでそれらについて考えてみます。

理由1・こども医療助成金があり医療費がかからないから

これは各都道府県や市区町村にはこどもの医療費を助成する制度があるから医療保険は必要ないという意見です。

確かにすべての市町村に医療費助成の制度はあるようですからそう考える人もいるでしょう。

ここで一つ注意しなければならないのが、医療費助成対象は保険診療の一部負担金部分に限られるということです。
治療費や入院費に関しての支払いは助成されますが、入院すれば必然的に必要になる食事療養費は助成対象外となる自治体もありますし、個室が必要となった場合は差額ベッド代も発生します。付き添いのために仕事を休むようなことになれば収入にも影響が出ますし、自宅と病院を往復するための交通費だってかかります。
このように助成されない出費があり、得られるはずの収入が減ってしまう可能性がある中で、医療費がかからないと言い切ってしまうことは難しいのではと思います。

もう一つの注意点が、この制度は全国一律ではないということです。
保険診療の一部負担金全額を助成してくれる自治体ばかりではありませんので、窓口での負担がゼロにならない地域もあるのです。
また、助成期間は中学卒業までや高校卒業までが一般的のようですが、短いところは小学校入学までで終了してしまう自治体もあります。
一般的な医療保険は既往症によっては申し込むことが出来ない商品が多いので、小学校入学までが助成期間の自治体では幼児期に大きな病気になってしまった場合、小学校入学以降健康保険に上乗せできる保障を持つことが出来ないといったケースも考えられます。

以上のようなことから、理由1を根拠にこどもの医療保険は不要と断言することはできないのではないかと思います。

理由2・こどもが入院する割合が低いから

これは子供の入院割合はわずか0.18%とリスクが低いから医療保険は必要ないという意見です。

確かに低いリスクについては目をつぶるという考え方もあると思います。

では少し目先を変えて、火災保険に入る理由の火災に遭うリスク自動車保険に入る理由の交通事故を起こしてしまうリスクについて考えてみたいと思います。

1年間に火災に遭うリスク
総務省消防庁発表の資料によると平成30年の総出火件数は 37,981 件だそうです。
また、平成30年の人口動態統計では全国の世帯数は、5,800万7,536世帯となっていますので、火災に遭う確率は37,981 件/5,800万7,536世帯=0.065%ということになります。
【参照】総務省公式サイト平成30年(1~12月)における火災の状況・住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(平成30年1月1日現在) 

交通事故を起こしてしまうリスク
警察庁交通局の資料では平成29年の交通事故発生件数は47万2,165件です。
この数字を同じく警察庁交通局発表の運転免許統計平成29年版にある免許所有者82,255,195人で割ると、その確率は47万2,165件/82,255,195人=0.57%になります。
【参照】警察庁交通局公式サイト平成29年中の交通事故の発生状況・運転免許統計(平成29年版)

いずれも数字だけを見ると高い確率ではないように見えてしまうかもしれません。
それでも火災に遭い家が全焼してしまったり、交通事故を起こして人に大けがをさせてしまったりした時のことを考え多くの方が保険に入っています。
当事者になる確率よりも当事者になってしまった時のリスクを考え加入しているのです。
これをこどもの医療保険に置き換えれば、医療保険を使う状況になる確率よりも仮にそのような状況になってしまった時の様々なリスクに備えるというのが保険の考え方なのではと思います。
残念ですが、こどもが重い病気にかかってしまう可能性はゼロではないのですから。

この理由2も医療保険は不要だと断言してしまう根拠としては少し弱いような気がします。

こどもの医療保険が不要と言い切れない理由

こどもの医療保険が不要であるとは言い切れない理由をまとめると次のとおりです。

医療費助成の対象は保険診療の一部負担金部分に限られる

自治体の医療費助成は、病気になってしまった時にかかる費用の全額を助成してくれるわけではありません。
保険診療外の部分は対象にならないのは既に書いた通りですが、助成対象となる本人一部負担金についても一定額は自己負担しなければならない自治体が数多くあるという事実があります。
そもそも医療保険は、保険診療の対象にならない自己負担分について備える意味合いが強い保険ですので、負担が発生する可能性がある以上必要ないと言い切ることはできないのではと思います。

医療保険は病気になってからでは加入できない可能性がある

医療保険は既往症があると入ることが出来ない場合があります。
病気になるのは大人になってからとは限りませんので、こどものうちに病気になってしまうと将来保険に加入できない可能性があるのです。
例えば下の記事を見ると、大きな病気のひとつ小児がんに罹患するこどもが年間2,000人以上存在することが分かります。

国立がん研究センターは30日、0~14歳の小児と15~39歳の思春期・若年成人を指す「AYA世代」でのがんの罹患(りかん)状況を公表した。最も患者数が多いがんは、0~19歳では白血病、20代は精巣がんや卵巣がんなどの胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、30代は女性乳がんだった。AYA世代のがんに関する詳しい調査は初めてという。
―中略―
罹患率では小児が人口10万人あたり12.3例、15~19歳では同14.2例、20代は同31.1例、30代は同91.1例だった。この罹患率を日本全体の人口に当てはめて1年間にがんと診断される症例数を推計すると、小児が約2100例、15~19歳が約900例、20代で約4200例、30代が約1万6300例に上る。
出典:日本経済新聞2018年5月30日版

それ以外の疾患を考えれば毎年多くのこどもたちが病気になってしまっているといえるでしょう。
その中の一定割合のこどもたちは将来にわたって保険に入ることが出来なくなってしまうかもしれないということを考えれば、こどものうちに保険に加入することが無駄であるとは思いません。
こどもである短い期間だけではなく一生という長いスパンで考えれば、将来のリスクに備えるため健康で保険料が安いこどものうちに医療保険に加入するメリットもあるのではないかと思います。
また、レアなケースにはなりますがこどもに遺伝的な疾患の心配がある場合は、もし発症してしまった場合保険加入が出来なくなる可能性があるということを考え、早い段階で将来保険料が変わらない終身タイプの医療保険に加入しておくべきかもしれません。

さいごに

今回考えたこどもの医療保険ですが、医療費助成制度が充実した地域にお住まいでしたら助成期間が終わってから考えるという選択もありますし、長いスパンで考えて最低限の保険に加入しておくという選択もあるでしょう。助成制度が十分でなかったり遺伝的要素があれば加入を検討されるでしょうし、貯金などで十分な準備ができていれば医療保険の加入など考えることもないかもしれません。

「こどもの医療保険」が必要と考えるか不要と考えるかは、それぞれの方の考え方や家庭の環境によって違ってくると思いますが、この記事がそのことについて考える際の一助になれば幸いです。